日頃私たちは、単に難しいと思って来た哲学者たちの「考え方」精神に触れる事により解りやすく創造の世界と未来に展開する会にしたい。前年の日本編に引き続き、それぞれ、オーソリティである講師の方々を迎え、興味深く開催。 2010年 第12回 探偵小説、クリスティー夫人の『アクロイド殺し』を読む テクストの不安、あるいは運命の双数 探偵小説の淵源はヴォルテールの「ザディグ」や、エドガー・ポーの「モルグ街の殺人」に求められ、コナン・ドイルにおいて古典的な定型がつくられたといわれる。アガサ・クリスティーもこの流れのなかで活躍するが、彼女の作品にはしばしば興味深い実験が試みられている。ここではヴァン・ダインが非難したように、定型的な探偵小説から見ればルール違反と思われた『アクロイド殺し』を取り上げる。 この作品は1926年、アガサが夫の愛人の名前を使って失踪事件を起こす年に発表された。江戸川乱歩はこの作品を世界の探偵小説ベストテンに入れており、R・バルト、G・ジュネット、A・ロブ=グリエ、P・バイヤールらもこの作品に特別な関心を示した。それは西欧近代の不安の現れでもある「探偵小説」の定型をなぞりながら、その不安を逆撫でする反-探偵小説の相貌をもっていた。 探偵小説のテクストは「犯人」を指示する記号の一総体となっており、探偵が犯人を特定することによりテクストに渦巻く不安な意味のたわむれは解消する。『アクロイド殺し』では「犯人は誰か?」という問いが宙吊りになるが、ここでは視点を変え、「被害者」に焦点を当ててみたい。このテクストで「ロジャー・アクロイドはなぜ殺されるのか?」を考えてみたいのである。 講師:内田隆三 1949年大阪府生まれ。京都大学文学部哲学科卒業。東京大学大学院総合文化研究所教授。専攻は社会理論、現代社会論。著書に、「消費社会と権力」「ミシェル・フーコー」「探偵小説の社会学」「柳田国男と事件の記録」「国土論」「社会学を学ぶ」「ベースボールの夢」など多数。 |
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第1回 5月14日(金) 19:00〜21:00 本当は誰が犯人なのか? 作者はあらゆる人物を疑いうるという。ピエール・バイヤールは『アクロイド殺し』におけるポワロの推理を妄想だと考えた。語り手は何も嘘をつかずにその手記を書いているとして、真犯人はのちのミス・マープルの原像となったあの女性だというのだ。なるほど、事件の舞台となったキングズ・アボット村は、ミス・マープルの住むセントメアリー・ミードにそっくりにみえるが・・・。 講師=内田隆三 |
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第2回 6月11日(金) 19:00〜21:00 作者の失踪――テクストのマジック フランスの小説家、アラン・ロブ=グリエは、『アクロイド殺し』の謎はシムノンのメグレ警視シリーズのように人間学的なものではなく、純粋にテクスチュアルなものだと考えた。絶妙のトリックは語られる出来事のうちではなく、語りの構造それ自体のうちにある。しかも作者がすでに失踪しており、テクストの意味が一義的に確定できないとすれば・・・。 講師=内田隆三 |
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第3回 7月9日(金)19:00〜21:00 動機の不在、そして運命の双数 二人の人物が、ごく微小な差異を残して、互いに相手の鏡像のように酷似するとき、彼らは「双数」をなしていると言うことにしよう。アガサのテクストが犯人の「動機」を宙吊りにするとき、アクロイドを包み込んでいた不気味な双数の網目が見えてくる。アクロイドの運命に双数がたわむれているとして、アガサは何に惹き寄せられているのか・・・。 講師=内田隆三 |
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■ワタリウム美術館の展覧会はフリーで御覧頂けます。 (有効期間:2010年7月) |
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●入会金 3,000円 (ワタリウム美術館サポート会員の方、「哲学・一日アート大学」第10回、第11回にご参加の方は無料。 ワタリウム美術館一般会員の方は半額) ●参加費 5,000円( 全3回 ) ●振込先 三井住友銀行 青山支店(普)1033281(名)ワタリウム美術館 |
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■申込方法 お名前、ご連絡先(住所/電話番号/Fax番号又はE-mailアドレス)をご記入の上、 E-mail:official@watarium.co.jpまたは、Fax:03-3405-7714までお送り頂き、下記の口座へお振込下さい。(定員になり次第〆切り) ■ ワタリウム美術館 〒150-0001 東京都渋谷区神宮前3-7-6 Tel.03−3402−3001 Fax.03−3405−7714 email:official@watarium.co.jp |
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