日頃私たちは、単に難しいと思って来た哲学者たちの「考え方」精神に触れる事により解りやすく創造の世界と未来に展開する会にしたい。前年の日本編に引き続き、それぞれ、オーソリティである講師の方々を迎え、興味深く開催。 ミシェル・フーコー「言葉と物」を準拠として 二十世紀の後半にフーコーは「人間の終焉」を考え、人間の存在が空虚で希薄になる時代の到来を予見していた。実際、二十世紀の百年をかけて、人間の存在はゆっくりと、だが確実に、断片化し、拡散していった。その統合の不能性のなかに、かつて人間と呼ばれたものの奇妙な生が営まれるようになる。二十世紀の果てしない戦争は、こうした断片化と拡散のための、無差別で過酷な装置としてはたらいたといえよう。 人間はその時代に自分の存在を取り戻そうとする努力を執拗に重ねていた。だが、この努力は同時にその無効性を、またその内部にまったく別の存在がはらまれていることの皮肉な証明でもあった。いずれ後の時代はこの努力を逆向きに読み取る可能性がある。すでに目にするように、少なくとも人間の集合的な存在の様態は、人間に対して無関心で、異生的なかたちをとって膨張している。この存在様態が深刻な疎外や矛盾に見えないのは、それが人間の存在とトポロジカルに外在する次元に横たわっているからである。 こうして歴史の現在は、さまざまな水準で、急激な変容ないしカタストロフの経験をたどっているようにみえる。だがこういう時代には、歴史の速い潮流に対して冷静な思考の距離をとり、時代が抱える勾配をしっかり見定めねばならない。そのためには、世界の現在をこのようなものとした西欧的な思考と精神のありようを、歴史の大きな流れのなかに位置づけることが必要である。ここではミシェル・フーコーの主著『言葉と物』を主要なテクストにして、ルネサンス末期の十六世紀から、十七・八世紀の古典主義時代、そして十九世紀以降の近代から二十世紀にいたる西欧の思考の歴史を解読する。 講師:内田隆三 1949年大阪府生まれ。京都大学文学部哲学科卒業。東京大学大学院総合文化研究所教授。専攻は社会理論、現代社会論。著書に、「消費社会と権力」「社会記 序」「ミシェル・フーコー」「テレビCMを読み解く」「探偵小説の社会学」「柳田国男と事件の記録」「国土論」 |
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2003年6月6日(fri) ■ルネサンスの終焉とドン・キホーテの冒険 天空から地中まで類似の想像力が駆け抜けた十六世紀西欧の思考の世界をとりあげ、「ドン・キホーテ」の冒険を通じて、それが古典主義の時代に移行していく道筋を考える。 講師=内田隆三 |
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2003年8月1日(fri) ■表象の時代とベラスケスの「侍女たち」 十七世紀半ばからはじまる古典主義時代の思考の世界を、ベラスケスの絵画「ラス・メニナス」(侍女たち)の構成を通じて解読する。 講師=内田隆三 |
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2003年9月19日(fri) ■博物誌から生物学へ―あるいはキュビエ変換 古典主義時代から人間の実存を台座とする近代性の時代への移行について、博物誌から生物学へと思考の変換を果たしたジョルジュ・キュビエの役割を中心に考察する。 講師=内田隆三 |
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2003年11月28日(fri) ■善悪、疾しい良心、禁欲の理想、あるいは近代的人間の系譜学 近代的人間の危うさに警告を発したニーチェの「道徳の系譜」をとりあげ、フーコー、ドゥルーズに準拠しつつ、人間の理性や主体の構造にひそむ暗鬱な政治学を明らかにする。 講師=内田隆三 |
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2004年1月30日(fri) ■思考の沼地―ボルヘスの迷宮、ルーセルの孤独 フーコーの「外の思考」や『言葉と物』の誕生に強いインスピレーションを与えたボルヘスの思考やレーモン・ルーセルの作品をたどり、西欧の言語と思考のゼロ地点を探る。 講師=内田隆三 |
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