今回は、ワタリウム美術館のコレクションより、
未公開作品を中心に108点を展示します。
近年、映画監督として注目を集めているジュリアン・シュナーベル(1951- アメリカ)の1988年の作品、
現代音楽家ジョン・ケージ(1912-1992 アメリカ)のドローイング、
日本の現代美術をリードした銅板画家、駒井哲郎(1920-1976日本)の作品など。
10年以上看板で覆われていたキース・ヘリングの壁画をこの展覧会のために公開します。
作品に加え、作家との出会い、その作品が生まれた経緯、
知られることのなかったエピソードなど、
それぞれの「コレクション物語」もお伝えしたいと思います。
1991年、8月29日。
ボイスが18歳まで育ったクレーフェの街を廻った午後、
そのまま、デュッセルドルフの
かつてはよく訪れたボイスの家に足をのばした。
思い出、いや、これからのこと。
ボイス夫人と話しながら、いつの間にか、3時間も過ぎてしまった。
門を出た私たちに、こころよい夏の風が渡った。
「美しい青い風がー」と思わず私は言った。
「ドイツの夏はいつもこんなよ」とエヴァ・ボイスは言った。
やがて乗った、タクシーの中までも、樹々の緑の香りがむせんだ。
(和多利志津子 1991年)
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